暑さに負けない!子どもの熱中症対策と水分補給について
梅雨明け後、暑い日が続くようになりました。
2018 年は、梅雨明けも早く猛暑日が多かったこともあり、過去最多の 10 万人近い方が、熱中症により救急搬送されたそうです。※平成 30 年(5 月から 9 月)の熱中症による救急搬送状況/消防庁 報道資料より
熱中症は、温度や湿度などの環境要因だけでなく、それぞれの年齢、性別、健康状態、日常生活などの様々な要因が重なって起こります。また子どもたちは、暑さの中でも夢中になって遊ぶので、大人が熱中症予防に十分気を配る必要があります。そこで今回は、熱中症予防・応急処置としての正しい水分補給についてご紹介します。
目次
子どもは熱中症になりやすい!?
子どもは、大人よりも熱中症にかかりやすいと言われています。
その理由として…
①:大人に比べて暑さに弱い
子どもは汗っかき!と言われますが、実は乳幼児は体温調節機能が未熟なため、うまく汗をかくことができません。そのためからだに熱がこもりやすく、体温が上昇しやすくなります。また乳幼児はからだの約 70%が水分です。全身に占めるからだの水分の割合が大人より多く、体重に比べて体表面積が広い分、外の気温の影響を受けやすくなっています。
「環境省熱中症環境保健マニュアル 2018」より
②:地面からの熱を受けやすい
乳幼児は身長も低いため、温められた地面からの照り返しによって、大人よりも高い気温の中過ごしています。通常気温は 150 ㎝の高さで測定されています。気温が 32℃の場合、子どもの高さではさらに気温は上がり 35℃にもなっていると言われています。
「環境省熱中症環境保健マニュアル 2018」より
③:自分で気が付かない
子どもは遊びに夢中になっていると、気付かないうちに熱中症になっていることがあります。また小さいお子さんほど自分からのどの渇きやからだの異変を訴えることが難しいため、周りの大人が気にかけてあげることが必要になります。
熱中症予防のポイント6つ
1. こまめに水分補給をする
「のどがかわいた」と思った時には、すでに脱水が始まっています。のどが渇く前に少しずつ水
分補給をしましょう。屋内でも、こまめな水分補給が必要です。また自分で水が飲めるよう学習
させることも大切です。
2. 熱や日差しからからだを守る
ゆったりとした通気性の良い涼しい服を着せるようにし、頭だけでなく後頭部や首も日差しから
守れるようつばの広い帽子をかぶるなどしましょう。
3. 暑さに負けないからだを作る
丈夫なからだを作るための基本は、正しい食生活。3 食しっかり食事を摂ることが大切です。そ
のほかに睡眠時間を十分にとること、生活リズムを整えることも暑さに負けないからだ作りのた
めには必要です。
4. 暑さを避ける
日差しが強い時間帯の外遊びは 30 分程度で切り上げましょう。またベビーカーは、アスファル
トからの照り返しで熱がこもります。長時間の移動に使用するのは避けましょう。
5. 子どもを一人にしない
お子さんは一人で移動することができません。短時間でも一人で放置することはやめましょう。
クーラーをつけていても車内に置き去りにすることは絶対にやめましょう。
6. 子どもの様子を気にかける
小さなお子さんは、自分の体調管理ができません。汗のかき方、顔色などお子さんの様子を周り
の大人が気にかけるようにしましょう。
ここまで、熱中症の予防・応急処置についてご紹介してきましたが、
では実際水分補給はどのように行っていったらよいでしょうか?
子どもの水分補給について
どのくらい飲ませたらいいの?
ヒトの体は 1 日で約 2000~2500ml ほどの水分が失われているといわれています。この失われた水分を補うために、食事に含まれる水分が約 1000ml、それ以外に飲み物で約 1000~1500ml を補給する必要があります。
少し多く感じるかもしれませんが、1 度にたくさん飲ませるのではなく、コップ 1 杯程度の水分をこまめにあげるようにしましょう。
いつ飲ませたらいい?保育園での取り組みを紹介
ポイントは、「時間を決めてこまめに」。
のどが渇いたと感じるときには、すでに脱水になっています。子どもは大人に比べて口の渇きを感じにくいため、時間を決めて水分摂取をすることと、しっかりご飯を食べることが大切です。保育園でも以下のスケジュールで水分摂取を行っています。
※HITOWA キッズライフ株式会社が保育園で指導している例
このスケジュールは目安であり、子どもの様子や日々の活動にあわせて、水分補給のタイミングは調整していますが、時間を決めておくと習慣化しやすいです。園では水分補給の大切さについて、子どもたちと一緒に考える時間も設けています。
「身体の中の水分ってどのくらい入っていると思う?」と尋ねると、こどもたちは頭をフル回転させて「お腹だけ!」「半分くらい!」と意見を述べてくれます。身体の70~80%が水分であることを、絵をみせながらこどもたちにお話しすると、「ええっ~!そんなに~!」と驚きの声があがっていました。
ご家庭でも絵本を利用して、子どもと一緒に水分補給の大切さや身体の不思議を考えてみてもよいですね。
【熱中症の絵本】
やさしくわかる びょうきのえほん どうして ねっちゅうしょうになるの?
清水直樹、清水さゆり 監修/せべまさゆき 絵/WILLこども知育研究所編著
何を飲ませたらいいの?
水分補給には、塩分も一緒に摂れるスポーツドリンクを飲ませた方がいい!と思っている方も多いと思います。汗をたくさんかいた後は、スポーツドリンクなどで塩分・ミネラル補給をすることも必要です。しかし、体に良いから…と日常的にスポーツドリンクを飲ませることは好ましくありません。スポーツドリンクの中には、ミネラル以外にも糖分もたくさん含まれています。500mlのペットボトル 1 本の中に、なんと砂糖が 15~30g(スティックシュガー5~10 本分)※も入っているものもあります。 ※兵庫県朝来市市役所ホームページ「飲み物に含まれる糖分量」より
糖分の摂り過ぎは、肥満や虫歯につながるだけでなく、甘いものに慣れてしまったお子さんは、食事を摂らなくなってしまうこともあります。
脱水を起こしている場合の飲み物としては、経口補水液がオススメです。最近では、ドラッグストアなどでよく見かけると思います。スポーツドリンクより糖分が少ないため、元気なときには少しおいしくないと感じるようです。しかし、この経口補水液もあくまで脱水状態の場合に補給する飲み物であり、経口補水液のボトルにも「医師から脱水状態時の食事療法として指示された場合に限り、お飲みください」との記載があります。脱水状態が改善したら飲むのを止めた方が良いでしょう。
これらのイオン飲料はあくまでも、運動中、運動前後、脱水状態の時に飲むようにしましょう。またコーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは、実は緑茶やほうじ茶、ココアやコーラなどにも含まれています。カフェインは利尿作用や眠れなくなるなどの影響があるため、控えるようにしましょう。牛乳も消化吸収に時間がかかることから水分補給としてはお勧めできません。これらのことから日常生活での水分補給としては、水や麦茶が最適です!
熱中症の症状と応急処置
熱中症の症状を放置していると死に至る可能性もありますが、適切な予防法を行っていれば防ぐことができますし、適切な応急処置により重症化を避けることができます。
熱中症の症状
熱中症は、早期発見と適切な応急処置により重症化を防ぐことができます。お子さんのからだに現れているサインを見逃さないようにしましょう。以下のような症状が出ていたら、熱中症にかかっている可能性があります。
熱中症の応急処置
【Ⅰ度】
・涼しいところへ移動する
クーラーの効いた室内や風通しの良い日陰へ移動させましょう
・からだを冷やす
衣服をゆるめ、保冷剤や濡らしたタオルで、首・わきの下、太ももの付け根などの太い血管部分を冷やしましょう。肌を濡らし、うちわなどであおいでもよいでしょう
・水分補給をさせる
水分だけでなく塩分も補給しましょう。
症状が改善しない場合・・・
【Ⅱ度/Ⅲ度】
すぐに病院受診、意識がない場合は救急車を呼ぶ
応急処置は続けましょう。
嘔吐している、意識がないときは、口から水分を飲ませてはいけません。
※環境省/熱中症環境保健マニュアル 2018、HITOWA キッズライフ株式会社/保健衛生マニュアル
親自身のケアも忘れずに
今回は子どもの熱中症対策を中心にお話してきましたが、日々お子さんの体調に気を付けているお母さん・お父さんたちは、つい自分のことは後回しになりがちです。
自分自身もしっかり水分補給をして、暑さに負けず楽しい夏をお過ごしください!