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2020/7/1

【子どもの睡眠科学】理想的な子どもの睡眠とその影響徹底解説

今、子育て・健康の分野のみならず、ビジネス書の本棚にも「睡眠」の本が多数並んでいます。過去最高に「睡眠」が注目されている時代だといっても良いでしょう。理由はひとつ、睡眠が科学的に解析され、睡眠不足が肥満、糖尿病、高血圧、認知症など広範囲に影響し、さらには寿命も左右する。身体への影響だけでなく、学びも成績も仕事の効率も睡眠に左右される。睡眠の科学的知見を無視できない時代になってきたからです。

加えて、社会が変化しました。24時間社会が一般化し、インターネットやスマートフォンなどの通信情報機器が広く普及し、眠りにくい社会になってきました。特に日本の睡眠偏差値が、諸外国と比較して著しく低いことも「睡眠」が注目を集めている理由でもあります。睡眠の影響は、成長の途上にある子どもにはさらに大問題!科学的に証明されてきた「睡眠」の真実を学び、お子さんの将来をも左右する可能性のある「子どもの睡眠」をより良く選択していきましょう。

目次

「子どもの睡眠」テスト!何問正解できますか?

「睡眠」を検索すると、たくさんの情報がヒットします。まずは、あなたの睡眠の知識を確認してみましょう。正しいと言われている「睡眠」の知識、科学的に正しいのはどれ?選んでみてください。

□ 90分単位で眠るとすっきり目覚める
□ ホットミルクを飲むと良く眠れる
□ 羊を数えると良く眠れる
□ 青は「沈静色」なので寝室の色におすすめ
□ 睡眠時間は8時間が理想
□ 睡眠前の入浴でリラックスして眠りを促す
□ 休みの日に睡眠不足を解消すればOK
□ 睡眠をとるくらいなら徹夜の試験勉強をしたほうが効果的

さて8問のうち、科学的に証明されているものはいくつあるでしょうか?
実は・・

ゼロ!です。
ひとつでも〇をつけたあなた、もしかしたらあなたの「睡眠」の知識は古いかもしれません。
早速、睡眠の科学を学んでみましょう。

「子どもの睡眠」子どもの成長への影響

睡眠中は成長ホルモンが出ます。
睡眠は、レム睡眠、浅いノンレム睡眠、深いノンレム睡眠に大別されます。

睡眠は子どもにとって重要事項!

深いノンレム睡眠時には成長ホルモンが分泌されます。「寝る子は育つ」という言葉通り、睡眠中に分泌された成長ホルモンによって、骨や肉体が形成され、子どもたちの健康な成長が実現します。

「私はもう成長期は過ぎたから、成長ホルモンは関係ないや」と思ったそこのあなた、大間違いです。成人の場合は、成長ホルモンは細胞の新陳代謝を促進し傷を治癒したり免疫を高めたりするなど健康な体を保つための機能も持っており、大人になってもやはり睡眠は必要不可欠です。

「子どもの睡眠」は記憶力をも左右?!

脳科学的にも睡眠は重要な機能があることが分かっています。

睡眠中に記憶が定着します

およそ90分周期で訪れるレム睡眠の間に、脳は日中の記憶を整理して定着させていると言われています。一夜漬けで試験を乗り切ったけれど、数日後には覚えた内容が頭からきれいさっぱり消えてなくなっていませんでしたか?これはまさに徹夜によってレム睡眠による記憶定着の段階を踏まなかったことが原因だと思われます。
※早寝早起き朝ごはんガイド(幼児用)「早寝早起き朝ごはん」全国協議会 参照

夜暗くなると分泌されるメラトニンは成長に大切な脳内物質

体温を下げて眠りを誘ったり、抗酸化作用や思春期がくるまで第二次性徴をおさえたりする働きを持つメラトニン。一生のうち幼児期に大量に分泌されるメラトニンは、夜暗くなったら寝ることで分泌されます。

科学的根拠に基づく「子どもの睡眠」への影響

東北大学のチームが、5~18歳の健康な子どもたち290名の「平日の睡眠時間」と脳のMRI「写真」を比較した結果、睡眠時間の短い子どもほど脳の「海馬」の体積が小さいことがわかりました。

睡眠不足は脳の発達に悪影響

「海馬」は記憶をつかさどる脳領域で、睡眠不足は脳の働きを低下させてしまっているだけではなく、脳自体を破壊してしまっている、もしくは脳の発達を遅らせてしまっている恐れがある事実がわかりました。(川島隆太「最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる」青春出版社 2018年)

睡眠不足は成長に悪影響

そのほか、睡眠と発達の研究はすすんでいて、言語発達と関連がある、集中力、情動面の問題が起こる、問題行動と優位に関連している、多動のリスクを高める、将来の肥満のリスクにつながるなど悪影響が報告されています。一方で、良い睡眠習慣は日中の身体活動量の増大、活動時の集中力につながるという良い影響の報告もされています。

理想的な睡眠時間

これまでの研究を見ると、睡眠ってあなどれない。
ところで、どれくらい寝たらよいか指標はあるのでしょうか。

全米睡眠財団がすすめる、子どもの理想的な睡眠時間は・・・
 4か月~12か月:1日12時間~16時間
 1~2歳:1日11時間~14時間
 3~5歳:1日10時間~13時間
 6~12歳:9~12時間
 13~18歳:8~10時間

一方で日本の0~3歳児の総睡眠時間の平均は、およそ11時間30分。最近睡眠を意識する家庭が多くなったという調査もありますが、いまだに日本の子どもの睡眠時間は、世界ワースト1or2位。あなたのお子さんの睡眠時間は理想的ですか?


※出典:Cross-cultural Differences in Infant and Toddler Sleep Jodi A Mindell, Avi Sadeh, Benjamin Wiegand, Ti Hwei How, Daniel Y T Goh. Sleep Medicine. Total sleep time across country.

子どもが夜眠れるようになる実践ポイント

「夜早く寝てほしい」と思っていても「寝ない!」に悩むご家庭も多いようです。
そんな家庭のあるあるは?

・寝かしつけに2~3時間かかる
・寝る準備を始めても子どもが「まだ寝ない」と抵抗する
・「遊びたい」といっておもちゃを出したりDVDを見せたりするとますます寝ない
・子どもが眠ってからママが離れると泣いたり、探しに来たりする

こんな状態が続くのは「つらい!」と悲鳴も聞こえてきそうです。
でも大丈夫。子どもが安心して入眠する条件もわかってきています。こちらも科学的に解明しましょう。

遅寝を誘うブルーライト

目から入る刺激は、睡眠・覚醒のリズムに大きな影響があることがわかっています。寝る前にスマートフォンの発する明るい光(ブルーライト)を見ると、昼が続いているとからだが勘違いし、頭が興奮状態になり、寝つきが悪くなります。明るいため、暗いところで分泌されるメラトニンが分泌されないことも寝つきが悪くなる原因。睡眠前のブルーライト、厳禁です。

体内時計を修正するカギは朝の光

身体の様々な部分には体内時計があり、24時間10分のリズムを平均的に刻んでいると言われています。それを24時間のリズムに修正するのが朝の光。朝起こす時、起きた直後に朝の光にあててあげましょう。朝の光には脳内物質セロトニンの分泌を促す役目もあります。

セロトニンは、脳と身体を覚醒させて日中の活動を活発にする、心のバランスを整え機嫌の良い状態にする役割があります。加えて眠りをさそうメラトニンの生成も促します。昼間はセロトニンを分泌ししっかり活動し、夜はメラトニンを分泌ししっかり眠る。この生活のリズムが子どもの成長を助けます。

セロトニンの分泌を増やして睡眠リズムを作る

日中の活動を機嫌よく活発にするセロトニンの分泌を増やすためには、太陽の光と共に、食事が重要。1日3回、同じ時間に食事をとること、特に朝食は最も大事。脳のエネルギー源になる炭水化物やたんぱく質を摂取することで、体内時計を修正することもわかってきています。セロトニンの分泌を増やすためには、朝の光をあびる、朝ごはんをよく噛んで食べる、日中身体を動かして遊ぶことがポイントです。

寝だめはNG

寝るのが遅くなったから、朝起こすのを遅くしよう。平日の寝不足を、週末の寝だめで補おう。子どものためと思う行動は実は危険!就学前の幼児1000人を対象にした調査によると、平日は早寝早起きをしていても週末寝だめをする家庭のお子さんの心身の状態は、夜更かし朝寝坊の家庭より悪化するそうです。これって、いわゆる時差ボケ。2時間ならベトナム旅行?3時間ならブータン旅行?と同じ状態。毎日同じ生活時間で過ごすのがベストです。

実践編:10時間睡眠シミュレーション

睡眠の大切さと睡眠するために必要なことが理解できたところで、実践編。
5歳児、10時間眠るためにはどんな生活をイメージしたらよいでしょう。

朝7時に起きることを想定したら、10時間睡眠のためには、夜9時に寝たらOKです。夕食を食べて、お風呂に入って、歯磨きをして・・・夜はなかなか忙しい。9時に寝かせるなんて無理という方に有効なテクニックのひとつがお風呂の時間を変えること。眠るときには、深部体温が下がります。子どもって眠たくなると手や足があったかくなることを経験的にご存知の方も多いはず。それは手や足から体温を放出して、体温を下げる仕組みがからだに備わっているからです。お風呂にゆっくりつかって、お布団直行!これは×。深部体温があがっていて、眠りにくいのです。

早く寝ている家庭と入眠が遅い家庭を比較した時の違いが、お風呂の時間。夕食より先にお風呂に入る家庭の方が、早く寝ているという調査結果も。夕食前にお風呂、寝る時間が遅いご家庭におすすめです。

光のコントロールをしましょう。寝る前のスマートフォンは×。寝る部屋は暗くしましょう。そして、毎日同じルーティンで眠ることをおすすめします

毎日同じは、子どもの生活の基本。

お風呂⇒夕食⇒静かな遊び(ブルーライト無し)⇒お布団
子どもの生活は一朝一夕に作ることはむつかしい。生活のルーティンができるまでは、ママやパパが子どもと一緒に寝ちゃうという覚悟も必要かも。大人の生活リズムを見直す必要があるかもしれません。

眠る前のおすすめは絵本読み。

絵本は、読み聞かせる大人に良いことも。絵本を読むことは、大人の気持ちが落ち着きリラックスする効果があります。おやすみなさいの前におすすめの絵本もたくさん出版されています。保育園でもお昼寝前の絵本読みは人気の時間。

保育園で人気のおやすみ絵本を紹介します。
お子様の年齢や好みにあわせてお楽しみください。


「もうねんね」松谷みよ子作 瀬川康男絵 童心社

犬も、猫も、ひよこも、ももちゃんも、みんなねんね。みんなと一緒に子どももねんね・・・。


「おやすみなさいおつきさま」マーガレット・ワイズ・ブラウン作 クレマント・ハード絵 せたていじ訳 評論社
子ウサギが部屋中のものに「おやすみ」とおはなししながらゆっくり眠りにつきます。おしゃれな色合いの絵は、読んでいる大人もうっとり。我が家の安眠ツアーのお手本になりそうです。


「おやすみ、ぼく」アンドリュー・ダッド文 エマ・クエイ絵 落合恵子訳 クレヨンハウス
オランウータンの子が眠ります。一日がんばってくれた足に、ももに、腕に感謝しながら。大人のあなたもどうぞ、頑張った自分に感謝です。

「ねむれないの?ちいくまくん」マーティン・ワッデル作 バーバラ・ファース絵 角野栄子訳 評論社
ちいくまくんは暗いのが怖くて眠れない。そうしたらおおくまさんが・・。気持ちがあたたかくなる1冊です。

子どもは自分で睡眠を選択できません。
選択できるのは親だけです。費用不要で、将来にわたり、子どもの成長に有効な睡眠。睡眠の新習慣、ぜひ生活にお役立てください。

関連情報

HITOWAキッズライフ株式会社

HITOWAキッズライフは、子育て家庭をサポートする専門的なサービスを提供しています。

子育て支援事業として東京都を中心に関東・北海道・沖縄県に認可/認証、企業主導型、受託、病児、学童保育施設を100施設以上を運営するほか、子育て家庭に関する新しい事業の創造を目指しています。

⇒ 太陽の子保育園・わらべうた保育園

一般社団法人キッズライフラボ

最新の科学や理論に基づく各種保育研修で、保育の質向上と保育者一人ひとりの成長をサポートし、子育て支援に関する研究・人材育成・企画開発ならびに普及活動を通じて、子どもたちの輝く未来の創造に寄与することを目指しています。

▼ 一般社団法人キッズライフラボ
https://www.kids-life-labo.or.jp/

記事監修
一般社団法人キッズライフラボ
原園 早苗

広島大学教育学部心理学科卒業後、一般企業に入社。引越しを機に退職し聖徳短期大学通信教育学部保育科にて初めて保育を学ぶ。その後、認可保育園に11年勤めたのち、2002年にHITOWAキッズライフ株式会社(当時は長谷川ナーシングパートナー(株))に入社。

 

乳幼児研究所の所長として職員研修やコンテンツ開発に携わる。2019年2月、さらなる保育の質向上と研修強化のため、一般社団法人キッズライフラボを設立。