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Kids
2019/12/4

世界が注目!子どもの生涯財産「非認知的能力」ってどう育む?

国内だけでなく、世界中でいま注目されている「非認知的能力」をご存知でしょうか?AIの進化、自動化が進む時代だからこそ、子どもに必要な力といわれています。今回は、そんな非認知的能力についてご紹介します。

目次

教育の変化

2020年に大学入試が大きく変わります。大学入試センター試験にかわる「大学入学共通テスト」と呼ばれる新しいテストが始まります。英語では「話す」技能も重視されるようになり、民間試験を選択する大学も。

小学校の教育も変わります。外国語活動の開始年齢が3年生に前倒しされ、5年生から正式な教科として英語を学ぶようになります。プログラミング教育が必須化され、情報教育も強化されます。

教育の変化の理由は社会の変化です。
何より職業が変化しています。車も電車でも、自動運転の話題が盛んです。子どもたちに人気の「電車の運転手になりたい」は死語になるかも。ネット通販に席巻されて、高級デパートの閉店も相次いでいます。無人の店舗の実験も相次ぎ、受付嬢はパソコンで代用されています。今ある仕事はなくなり、現時点では存在していない仕事に就いたり、開発されていない技術を使ったりする仕事が増えてくる未来がやってきそうです。

このような新しい未来に対応する人材を育成するための、教育改革です。

この変化を、子育てをされている皆さんはどのように感じていますか?どんなふうに育てたらいいか全くわからない、お手上げですか?それとも、未知の未来でもたくましくいく抜く子を育てるために新しい子育てを模索したいですか?
今、世界は子育ての岐路に立っています。

先に述べた教育内容の変更は、実は、日本だけの問題ではなく、世界に共通する課題です。各国が基準にしているのは、OECD(経済協力開発機構)が先導する「Education 2030」です。2030年を生き抜くための教育の指針を示したものです。経済発展を議論する団体であるOECDの現在の最大の関心ごとは、目の前の経済ではなく、実は未来に向けた教育なのです。

予測することが困難な時代にも持続可能な社会を作るためには、変化に対応できる人を育てることしかできません。OECDは、教育だけが世界を救うと考えているのです。

2030年を生き抜くために育てたい3つの力

「Education 2030」で示されている、2030年を生き抜くために育てたい3つの力をご紹介します。

一つ目の力が「新たな価値を創造する力」。
他者と協働して、新しい時代の新しい価値を創り出す力です。そこで必要になるのは、適応力・創造力・好奇心・新しいものを受け入れるオープンマインドだとしています。

二つ目の力は「対立やジレンマを克服する力」。
新しい価値を創造する過程では、矛盾も生じるでしょう。相容れない考えや立場の人と協働する時に、お互いのつながりや関連を考慮しながら、総合的に考えて行動する力が必要になります。

三つめは「責任ある行動をとる力」。
自分の成果物について責任をもって説明する力。自分の行動を振り返り、客観的に評価する自己調整する力が大切です。そこで必要になるのが、責任感・問題解決力・適応力です。

この3つの力に共通していることがあることに気づかれましたか?
この3つの力ともに「目に見えない力」だということです。

子どもに身につけてほしい2つの力

さて、子どもを育てていくうえで、子どもにつけてほしい力は2種類に分類できます。

1)認知的スキル

認知的スキルとは、具体的には、字が書ける、計算ができる、はさみが使える、などです。この共通点は何でしょうか?共通点は「目に見える」ということです。目に見えるから、スキルが身についたか否か、よくわかります。

目に見えるからこそ、大人は「字が書けるようになった」「計算ができるようになった」「はさみが使えるようになった」と喜びますよね。

2)非認知的スキル

二つ目のスキルは、認知的スキルとは逆に「目に見えない力」=「非認知的スキル」です。具体的には、がんばる、あきらめない、粘り強い、好奇心がある、などなど。こちらは認知的スキルとは逆に、目に見えないから、スキルが身についたか否か、よくわからないことも多い。がんばれる時もあれば、がんばれない時もある。見る人によっても「よくがんばった」「もっとがんばれ」と判断がわかれる経験をされた方も多いのでは。

「Education 2030」で示されたこの「非認知的スキル」を育てることが、教育の課題になっています。今、教育の注目点は「非認知的スキル」なのです。

もう一つ、わかったことがあります。
非認知的スキルは乳児期から育ち、一度身についたら生涯財産になるということです。
一方の認知的スキルは、早期に教育して標準よりも早く身につけても、早期教育の効果はすぐに失われてしまい、普通に学んだ人と同じ状態になるということです。少し前までの早期教育では「字を早い時期に覚える」「早い時期に計算できる」など、少しでも早い時期に認知的スキルを育てることが子どもの将来のためになると信じて行われてきました。が、実は、将来にわたって効果は持続しないことが、科学的に明らかになってきました。

子どもの時間は限られています。将来なくなってしまう早期の認知教育、字や計算を教えることに時間をかけるのか、それとも、乳幼児期に育てたら一生財産になる非認知的スキルを育てることに時間をかけるのか?答えは明らかです。乳幼児期にこそ、非認知的スキルを確実に育てていくことが大切なのです。

「非認知的スキルって初めて聞いた」
「どんなふうに育てたらいいかわからない」
「目に見えない力を育てるのは大変そう」

そんな声が聞こえてきそうです。
でも、大丈夫です。保育園では、見えない力を育てる活動を行っていて、たくさんの知恵があります。子育てでも活用できる知恵を、具体的に紹介していきましょう。

非認知的スキルを育てる方法

1)注目!「いたずら」

日々繰り広げられる「いたずら」にイライラすることも多いかも。でも、これが子どもの非認知的スキルを伸ばすカギなのです。ティッシュペーパーが全部ひきだされていた!引き出しを全部開けて洋服を引っ張り出していた!ママの化粧品をひっくり返してお化粧していた!

困りますよね。では、このいたずら。子どもはママを困らせようと思っているのでしょうか?ティッシュペーパーが全部ひきだされていた!子どもの視点から見てみると・・・

次々出てくるティッシュペーパー!なぜなぜ?楽しい!気持ちいい!また出てきた!予測通り!育っている力は・・次を予測する力、集中力、持続力、好奇心等々。

ねっ、ママを困らせようと思っていないでしょ。いたずらの原動力は「好奇心」。子どもの中で今、一番興味があって楽しいこと。保育園では「いたずら」を「遊び」に変えています。

「ティッシュペーパーが全部ひきだされていた」事件を引き起こす時期におすすめなのが、ミルク缶からスカーフを引き出す手作り玩具。安心して引っ張り出すができます。スカーフをチェーンに変えたり、ミルク缶を紙管に変えたりと変幻自在。安心して「引っ張り出す」を保証してあげられます。

キーワードは「いたずら」を「遊び」に変換する。子どもとの知恵比べを楽しみながら、非認知的スキルを育ててください。

2)注目!「お散歩」

私が1歳児クラスを担当していた時に、とてもかわいい新入園児に出会いました。ザ・子ども!あらゆるいたずらをするのです。それも楽しそうに!知恵たっぷりに!!保護者に子育てのポイントを伺いました。

その子育てが素敵だったのです。
「お散歩が大好きな子なんです。だから、散歩はいつも子どものあとをついて歩きました。へー、こんな発見するんだ。こんなことが好きなんだと観察するのが、私も楽しくって!」子どものあとからついて歩くって素敵。子どもの興味がわかりますよね。皆さんのお散歩って、子どもの興味に沿っていますか?それとも、大人のお出かけのお供ですか?ベビーカーで強制連行?

日々姿を変える自然は、子どもの非認知的スキルを育てるために最適な環境です。保育園でも毎日、お散歩に出かけています。もちろん「今日はこんな活動をしよう」と計画して出かけるのですが、それ以上に偶然出会うことが楽しいのです。

雨の日の散歩。子どもの大発見は、なめくじの足跡(!?)。確かに濡れたアスファルトの上に、ピカピカ光る一本道。その先にいたのはなめくじだったのです。そこからなめくじ博士が誕生するほど研究しました!

散歩道にあるカリンの木。毎日カリンに呼びかけます。「早く大きくなってね」「色がかわってきたね」「いい匂いがするよ」「もう食べられるんじゃない」。子どもたちの毎日の熱意が届いたのか(決して下さいと言ったわけではありません!)保育園にカリンを届けていただきました。薄くスライスして食べてみたら・・「おいしくない!」。ここからカリンの大研究。研究の結果、はちみつ漬けにして、飲んでみたら「おいしい」!子どもたちの研究のおかげで、おいしいジュースをいただけました。

散歩での発見から始まる活動。目には見えないけれど、子どもの力が育っていることを感じていただけたら嬉しいです。ちなみに、私が大好きはおはなし「長くつ下のピッピ」(リンドグレーン作)の主人公「ピッピ」の職業(自称)ってご存知ですか?正解は「もの発見家」。子どもたちを立派な「もの発見家」に育ててください。

3)注目!「作る」

子どもたちは芸術家。いつも何かを作っています。時には、壁にお絵かきされて「あー!」ということもあるけれど・・・。

保育園の水遊び。絵の具も出して、窓ガラスに自由にお絵描き。カラフルな窓のできあがりです。カラフルな光の中でお昼寝して・・そろそろ起きてくる時間。外から、窓ガラスに水シャワー。窓ガラスの絵の具が溶け出して・・。寝ぼけまなこの子どもたちの目がぱっちりあいて「虹だー」大歓声!

子ども一人に1個の段ボール箱。皆が好きなお家を作りました。一人1軒、それぞれ違うデザイナーズハウス!「こわしたくない」という子どもの希望で、部屋中広がる段ボールのおうちの街の空き地に布団を敷いて過ごした幸せな1か月。(ちなみに1歳児クラスの子どもたちです)

保育園で準備した立派な額。子どもたちが書いた絵を入れるのです。子どものせりふと一緒に。小さな芸術家の作品が、立派な額の中で輝く。子どもの書きたい気持ちも書いたものも丸ごと大事にする。「自分ってすごい」と根拠のない自信が育ちます。

作るって、素敵でしょ。

まとめ

そのほか、絵本から広がるあそび、なりきるあそび、様々なごっこあそび。非認知的スキルを育てる遊びのエピソードは数限りないのですが、今回はこのあたりで。

子どもの「非認知的スキル」を育てる活動が、保育園にはたくさんあります。地域の方を対象に、保育園体験を実施している保育園もあります。ぜひ保育園の知恵を子育てに活用してください。

「非認知的スキル」をもっと学びたい方におすすめの書籍を紹介します。こちらもぜひお読みください。

大豆生田啓友、大豆生田千夏
「非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳~5歳児のあと伸びする力を高める」
講談社 2019

関連情報

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https://www.kids-life-labo.or.jp/

記事監修
一般社団法人キッズライフラボ
原園 早苗

広島大学教育学部心理学科卒業後、一般企業に入社。引越しを機に退職し聖徳短期大学通信教育学部保育科にて初めて保育を学ぶ。その後、認可保育園に11年勤めたのち、2002年にHITOWAキッズライフ株式会社(当時は長谷川ナーシングパートナー(株))に入社。

 

乳幼児研究所の所長として職員研修やコンテンツ開発に携わる。2019年2月、さらなる保育の質向上と研修強化のため、一般社団法人キッズライフラボを設立。